木地を挽いて、漆を3回施す。
仁城さんの仕事は潔いほどにシンプル。
丈夫な器にするためのことを、必要最小限。
分業が基本の漆器の世界で、
木地から塗りまでの作業を、ひとりで一貫して行う。
素材の声を聴いて、その生命、とただ誠実に向き合いながら。
仁城さんのうつわから聴こえてくるのは、慈しまれた木のよろこびの声。
触れたときになんだかほっとして、
何でも受け止めてくれそうな大らかさがあって。
(お茶漬けや、時にはきっとカップ麺でさえも…)
てらいなく、作為なく、
自然で心地のよいうつわ。
「木の木目があって、漆が塗られていて、素材に助けられている自分がいる。
自分は何もしていない…」
「心地よいもの、目ざわりでないものを作り続けてきた。」
「美しいとか、美しくないとか、そんな大それたことではなくて…」
仁城さんのうつわに触れながら
聞かせて頂いた言葉と、しわしわの笑顔を思い出す。
祖母に使ってほしいな… と
顔が思い浮かんだ入れ子椀。
いつか私が、人生の終焉を意識するときが来たら、
仁城さんの入れ子椀、ただこれひとつで
365日の、まいにちのごはんを食べたいなと思う。
「美しい」とかではない
と仁城さんは瓢々と言ったけれど…
大地に立ち、鳥や虫たちの住みかになり、
人々の目を休め、時に木陰になるような大木のように
仁城さんの生きる姿勢、そのものが映されているうつわ
やっぱり、「美しい」 です。
スタッフ 西川